コロナ禍をきっかけに起こった越境ECブームですが、現在は越境EC利用の定着やインバウンド需要の高まりから、次のステージへと向かっています。
海外ユーザーの日本製品・コンテンツへの興味関心が高まっている今、訪日客との接点としての越境ECに注目が集まっているのです。
そこでこの記事では、デジタルマーケティングに携わって18年以上の実績を持つTheDigitalXが、日本企業の越境ECに関する以下の疑問について詳しく解説していきます。
「越境ECにおける日本企業の強みとは」
「越境ECに成功する日本企業の特徴は?」
「実際に越境ECに成功した企業の具体例が知りたい」
さらに、日本企業における越境ECの市場規模や現状、トレンドや勝ち筋についても紹介していきますので、ビジネスの展開先や戦略に悩んでいる方は必見です
日本企業における越境ECの市場規模と現状
参照:statista「2013年~2022年 日本のBtoC ECの市場規模」
日本国内におけるEC市場の取引額はBtoBが圧倒的ですが、近年はBtoCのeコマースも拡大傾向にあり、CtoCも発展しつつあります。
2022年におけるBtoC電子取引商市場は約9.1%に達し、2013年の3.9%から大きく増加しました。
BtoCは10年間で市場規模が倍以上に成長しており、今後も伸びしろが期待されています。
ホビーや趣味関連・家電・生活雑貨のEC化率は高い傾向ですが、食料・飲料の分野は他国に遅れを取っている傾向です。
一方で、BtoBの国内EC化率は既に全体の3分の1に到達しているため、やや飽和傾向にあります。
そのため、BtoCはもちろん、BtoB業界においても越境ECを視野に入れる動きが高まっている傾向です。
近年では、ITの発展や円安を追い風に、中小企業が続々と越境ECに参入しています。
【世界】日米中間の越境EC市場規模
参照:経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」
経済産業省の上記データを参照すると、2022年における国別BtoC市場規模ランキングは以下のようになります。
順位 | 国 | 割合 |
---|---|---|
1位 | 中国 | 50.4% |
2位 | アメリカ | 18.4% |
3位 | イギリス | 4.5% |
4位 | 日本 | 3.1% |
日本は世界有数のEC市場のうちの1つです。市場のトップである中国やアメリカが主な進出先となっており、いずれの国家間でも取引額は増加傾向にあります。
日本から中国への越境EC額は2兆を超えており、アメリカへの越境ECも1兆以上の取引額です。
さらに、アメリカにおいては、中国よりも日本からの購入額が多い傾向があります。
statistaのデータを参照すると、世界のeコマース市場は今後も成長し続ける見通しです。
2026年には、小売売上高の4分の1程度まで拡大することが期待されています。
参照:sutatista「モバイル端末の普及と共に発展するEコマース」
また、アメリカ越境EC参入の詳しい内容については、以下の記事もご覧ください。
【今後注目】東南アジアの越境EC市場規模
韓国や東南アジアは、近年急速に成長を遂げている注目の越境EC市場です。
なかでもモバイル端末を経由した「Mコマース」はアジアで人気が高く、韓国においては取引総額の7割以上をMコマースが占めています。
これは、アジア諸国においてスマホが急速に普及したことが主な理由です。
sutatistaのデータを参照すると、2023年時点における東南アジアのeコマース市場は約1,390億米ドルの規模があり、2025年までに大幅に拡大する見通しがあります。
そのため、東南アジアも今後日本企業が進出していくのにおすすめの市場だといえるでしょう。
参照:statista「アジア太平洋地域の電子商取引 - 統計と事実」
東南アジア・韓国の越境EC市場については、以下の記事を参考にしてください。
越境ECにおける日本企業の強み
越境EC展開時は、他国にはない日本企業独自の「強み」をアピールすることも大切です。
高品質な「メイドインジャパン」の製品は世界からも高需が高く、1つのブランドとしての地位を確立しています。
海賊版などが横行している海外では、真偽の判別が難しい精巧な偽物も数多く存在しているため、「日本企業が販売する日本の商品」というだけで価値があるケースも多いです。
日本企業の越境ECにおけるトレンド傾向
以下は、海外需要の高い日本の越境ECアイテムを、カテゴリー別にランキング化したものです。
アニメ・マンガ・おもちゃなどは幅広い層に需要があり、アジア圏からはファッションや食品・化粧品などがとくに人気です。上記のトレンドに加え、安全性や品質・性能を求める海外ユーザーからは「家電製品」「日用雑貨」などの越境EC需要も高まっています。
越境ECに成功する日本企業の特徴
ここからは、越境ECに成功する日本企業の特徴を3つ紹介していきます。
ターゲット国のローカライズが入念
商品訴求や説明に力を入れている
積極的な情報発信をしている
ターゲット国のローカライズが入念
越境ECで売上を伸ばしている日本企業は、単に規模の大きい市場や人気のある市場に進出するのではなく、自社サービスとの親和性が高い国や地域をターゲティングしています。
現状のデータから流入してきている海外ユーザーを把握し、ロジカルに展開先を選出することが大切です。
また、成功している日本企業には、参入前のリサーチとして「的確なローカライズをおこなっている」という共通点もあります。
ターゲット国の市場動向だけでなく、消費者の行動傾向や文化的背景、商習慣なども深く掘り下げているのです。
商品訴求や説明に力を入れている
越境ECに成功している企業は、商品の特徴や使用方法、素材などを詳しく具体的に説明している傾向があります。越境EC商材は「直接手に取って確かめることができない」のがデメリットです。
そのため、海外ユーザーの手元に届いたときに「思っていたものと違う」という齟齬が生まれないよう、国内よりも丁寧な情報提供を心掛けています。
顧客からの問い合わせ対応を積極的におこなっているという企業も少なくありません。
積極的な情報発信をしている
越境ECにおいては、ターゲット国での認知度を高めることが成功のカギを握ります。そのため、積極的に情報を発信し続けることも重要なポイントです。
SNSやコンテンツマーケティング、広告出稿やオフラインマーケティングなど、情報発信の手法は幅広い選択肢があります。
その中から、現地における効果的な手法を選び、潜在顧客との接点を築いていくことが大切になるでしょう。
また、テストマーケティングや現地顧客のフィードバックを、すばやく反映させられるかどうかも成功の分かれ道になります。
新規顧客獲得だけでなく既存顧客の維持を図ることも、売上増加に大きく影響するでしょう。
日本企業の越境ECの成功事例5選
ここからは、越境ECに成功している日本企業の事例を5つ紹介していきます。
趣味・ホビー:Tokyo Otaku Mode
食品:北海道お土産探検隊
ファッション:Tabio
生活雑貨:BENTO&CO
ディスカウントショップ:多慶屋
その他の事例についてはこちらの記事でも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
1.Tokyo Otaku Mode
「Tokyo Otaku Mode」は、「クールジャパン」と謳われる日本のポップカルチャー、アニメやマンガ関連のグッズを展開する越境ECサイトです。
「日本のオタク文化を好む海外ユーザーが手軽にグッズ購入できるサイト」を目指し、動線の確保と整備をおこないました。
Tokyo Otaku Modeが実践した越境EC戦略は以下の通りです。
現在ではアメリカ・カナダ・フランスなどの欧米諸国を中心に、約100ヵ国以上の国々へと売上を伸ばしています。
2.北海道お土産探検隊
「北海道お土産探検隊」は、山ト小笠原商店が運営するECサイトです。
2010年という早い段階から越境EC需要に目を付け、IT関連の専門知識がない状況を打開した実績を誇っています。
越境ECのノウハウを、一から作り上げたパイオニア的存在だといえるでしょう。
北海道お土産探検隊が実践した越境EC戦略は以下の通りです。
また、現在出店している越境ECプラットフォームは以下の通りです。
Rakuten GlobalMarket
Yahoo台湾
eBay
WeChat
上記の企業努力と戦略により、海外人気の高い日本の定番お土産品である「六花亭」「ROYCE’」などで売上を伸ばし、越境ECに成功しました。
現在は北海道の銘菓を中心に、600種類以上の食品を展開しています。
3.Tabio
「Tabio」は、国内だけでなくヨーロッパや中国、アメリカに実店舗を持つ靴下専門ブランドです。
2021年に越境ECへと参入し、中国・台湾圏の顧客を中心に昨対比2割以上増の実績を作り、販路を拡大しました。
Tabioが実践した越境EC戦略は以下の通りです。
越境ECサイトのデザインやブランディングが成功したことや、現状の国内EC運用オペレーションのまま越境ECに参入できる「Buyee Connect」を導入したことが勝ち筋となっています。
4.BENTO&CO
ベルトラン株式会社が運営する「BENTO&CO」は、日本独自の文化である「弁当箱」をメインに扱うキッチン雑貨ブランドです。
実店舗とeコマースを併用し、国内外へと売上を伸ばしています。
BENTO&COが実践した越境EC戦略は以下の通りです。
ECサイト構築や納品書作成業務をサイトやアプリで効率化しつつ、SNSを中心にマーケティングをおこなうことで、海外における認知度を向上させることに成功しています。
現在は世界60ヵ国へ向けて越境EC事業を展開し、日本の「bento」文化を発信し続けている企業です。
5.多慶屋
「多慶屋」は、東京の御徒町に実店舗を構えるディスカウントショップです。
年間40万人以上の外国人観光客が訪れており、帰国後のリピート購入目的で越境ECに参入しました。
多慶屋が実践した越境EC戦略は以下の通りです。
ターゲットをリピーターに絞って戦略を打つことにより、広告費などをかけず低コストでの認知度拡大に成功しています。
日本企業が越境ECで成功する勝ち筋
ここからは、日本企業が越境ECで成功するための勝ち筋を、デジタルマーケティングのプロフェッショナルの観点から解説していきます。
現地におけるニーズや消費者の習慣・商習慣を把握する
多言語対応を意識する
現地の主要な決済方法を導入する
現地での認知度向上を意識する
現地におけるニーズや消費者の習慣・商習慣を把握する
まずは、現地におけるニーズや消費者の習慣などを把握することが大切です。
アンケート調査・現地の競合調査・オンラインのデータ分析・現地モニターへのヒアリングなど、さまざまな角度からリサーチや検証をおこないましょう。
とくに現地モニターやインフルエンサーマーケティングでは、実際に現地で使ってもらうことでニーズが見えてくることも多いです。
たとえば、ヨーロッパに向けたシャンプーの越境ECを検討しているケースで、現地モニターの感想から「日本との水質の違いにより泡立ちが悪いことが発覚した」としましょう。
この場合、ヨーロッパでなくアジア展開に変更する、ヨーロッパの水質に適したシャンプーをPRするなど改善策が立案できます。
より的確な商品戦略・マーケティング戦略がしやすくなる、つまりPDCAサイクルが回しやすくなるメリットがあるのです。
多言語対応を意識する
越境EC参入を検討しているなら英語対応は必須ですが、市場によっては多言語対応も必要になってきます。
ただ翻訳アプリなどで訳すのではなく、現地にローカライズした正確な翻訳が成功のカギを握るケースも多いです。
また英語圏では、地域や国ごとにローカライズされた英語表現を取り入れることが大切になります。
きちんと現地に即した翻訳をおこなうことで、効果的な認知拡大・信頼構築が期待できるでしょう。
現地の主要な決済方法を導入する
越境ECでは、ターゲット国の市場に合わせた決済方法を用意することも重要です。海外ユーザーは、使い慣れている決済手段がないと購入を諦めて離脱する傾向があります。
せっかくサイトに流入してきても、ユーザーにとっての不便さがあると機会損失につながる可能性が高いです。
現地での認知度向上を意識する
越境ECに参入する際は、事前にプラットフォームを活用した積極的な情報発信をおこない、認知度を高めておくことが重要です。
SNSやデジタルマーケティング、インフルエンサーマーケティングなどさまざまな手法がありますが、ターゲット国においてシェア率の高いプラットフォームを活用することが大切になります。
さらに、届けたいユーザー層の利用率にも着目することも意識しましょう。
日本企業が越境ECをおこなう際の注意点
最後に、日本企業が越境ECに参入する際の注意点や、つまづきやすいポイントを紹介します。
現地への言語対応
輸送コスト
現地の法規制
現地への言語対応
まず、言語対応の配慮により、現地顧客の購入プロセスにおける不安や疑問点を解消することを意識しましょう。
越境ECサイトの翻訳だけでなく、現地の言語に対応できるカスタマーサービスが必要です。
海外ユーザーからの問い合わせに対応できる窓口を作ることは、顧客満足度の向上にもつながります。
輸送コスト
海外に拠点がない場合は、基本的に国内から発送することになるため、関税などの輸送コストも考慮する必要があります。
配送料に加えて関税の支払い義務が発生すると、購入者から受け取り拒否される可能性が高いです。
そのため、関税に関する情報はしっかりと明記しておくことが大切になるでしょう。
また越境ECは物理的な距離があり、輸送に時間がかかることから、紛失や破損のリスクにも配慮が必要です。
梱包を丁寧におこなうだけでなく、保証金額が高い・信頼性の高い配送会社を選ぶなどの対応が求められるでしょう。
現地の法規制
越境EC事業では、ターゲット国のルールに則った対応も必要になります。
日本では販売できるものが海外では規制の対象であったり、輸出自体がNGであるケースも多いです。
とくに規制されやすいのは食品・化粧品・医薬品などのカテゴリーなので、しっかり法規制を把握しておきましょう。
また、現地で既に商標登録されている商品に関しては、たとえ本家であっても使用できません。
ただし日本での販売実績がある場合は、裁判や手続きを経ることで認められるケースもあります。
日本企業の越境ECに関するよくある質問
最後に、日本企業の越境ECに関するよくある質問を紹介します。
越境ECの国別ランキングが知りたいです。
ベトナムの越境EC市場を教えてください。
シンガポールの越境ECの現状を教えてください。
オーストラリア越境ECの市場規模は?
マレーシア越境ECの市場や注意点について教えてください。
インドネシアにおける越境ECに最適なプラットフォームは?
タイ越境ECの勝ち筋とおすすめプラットフォームは?
越境ECの国別ランキングが知りたいです。
越境ECの国別ランキングについては、以下の記事を参考にしてください。
ベトナムの越境EC市場を教えてください。
ベトナム越境EC市場や人気のプラットフォームについては、以下の記事で詳しく解説しています。
シンガポールの越境ECの現状を教えてください。
シンガポールにおける越境ECの現状は、以下の記事を参考にしてください。
オーストラリア越境ECの市場規模は?
オーストラリアにおける越境ECの市場規模については、以下の記事で詳しく解説しています。
マレーシア越境ECの市場や注意点について教えてください。
マレーシアにおける越境ECの規制や税制については、以下の記事を参考にしてください。
インドネシアにおける越境ECに最適なプラットフォームは?
インドネシアの主要越境ECプラットフォームは、以下の記事で紹介しています。
タイ越境ECの勝ち筋とおすすめプラットフォームは?
タイ越境ECの勝ち筋については、以下の記事で詳しく解説しています。
日本企業における越境EC戦略立案はTheDigitalXまでご相談ください
先述した成功企業の例からもわかるように、越境ECではただ商品を発送するだけでは成功できません。文化や言語の壁を乗り越えること、海外での認知度を上げることを意識して、効果的なマーケティングをおこなうことが大切になります。
弊社TheDigitalXでは、デジタルマーケティングに18年以上携わってきた実績をもとに、越境ECの戦略立案や施策実行のお手伝いが可能です。
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