2024年11月8日
海外マーケティングとは?成功に必要な戦略立案の手順を解説
ビジネスのグローバル化が進む現代では、海外をターゲットにしたマーケティングが注目を集めています。
しかし、言語、文化など、あらゆるものが日本とは異なる海外をターゲットに、どのようにマーケティング戦略を立てれば良いのか、曖昧な方も多いはずです。
そこでこの記事では、海外向けのマーケティングの始め方として「4ステップで」「必須フレームワークもセットで」解説していきます。
海外マーケティングとは?始める前に知っておくべきこと
海外マーケティングの始め方を解説する前に、まずは「海外マーケティングの概要」について取り上げていきます。
日本と海外の違いを把握しておく
海外マーケティングに取り組む上で、まず真っ先にやるべきことが「日本と海外の違いの把握」です。
基本的には、日本とターゲット国の違いとして、下記の点に注意する必要があります。
言語
文化
通貨
購買行動
SNS
広告戦略
商慣習
言語、文化などはイメージがつくと思いますが、「広告戦略」「商慣習」といった部分も事前にチェックしておくべきです。
また、こういった細かな部分の違いを把握した上でマーケティングを仕掛けるには、日本人だけでなく、現地ネイティブと連携していくことが求められます。
グローバルワイドなマーケティング戦略は世界各国、重要性を熟知しているので、ターゲット国のネイティブマーケターにジョインしてもらうなど、事前に人材をプロジェクトに組み込んでおきましょう。
マーケティング手法を把握しておく
海外マーケティングの手法を把握しておくことも、成功には欠かせない要素です。
ここでは、海外マーケティングでセオリーとなる手法として、オフライン、オンラインにわけて解説していきます。
【オフラインマーケティング】
テレビ
ラジオ
OOH
各種イベント
従来型のオフラインマーケティングは、テレビ、ラジオ、そしてOOH(屋外広告)があげられます。
これらのメディアはインターネットの台頭により急速に力を失い、未だに大きな力を持っているものの、「頭打ち」になっているのが現実です。
一方、各種オフラインのイベントは変わらず好調で、親日文化がある国では日本関連のイベントやフェスティバルがすこぶる人気があります。
こういった場所を活用し、自社やモノ、サービスの認知度を高めることは効果的です。
【デジタルマーケティング】
検索エンジン
SNS
DOOH
続いてデジタルマーケティングについては、今後の主流になる手法だといえます。
セオリーは「検索エンジン(SEO/リスティング)とSNSの両輪を回す」ことで、特にSNSを活用したマーケティングはスマートフォンが成長国にも普及しつつある今、もはや「必須級」のマーケティング手法だといえます。
一方、オンラインとオフラインのミックスである「DOOH(屋外デジタル広告)」も選択肢の1つ。
デジタルサイネージなどその手法は日進月歩で進んでいるため、今後注目のマーケティング手法だといえるでしょう。
成功に必要な戦略立案の手順
マーケティングを始める上で欠かせないのが、戦略立案の「手順」です。
よくある間違いが、「とりあえず」でマーケティングを始めてしまうこと。
デジタルマーケティングはその気になれば数日程度でスタートができますが、事前に、正しい順序に従って戦略を立案しないと、思うような効果は出てくれません。
調査と分析
セグメンテーションとターゲティング
マーケティング戦略の策定
実行とフィードバック
以上の手順に従って綿密に戦略を立案し、海外マーケティングのロードマップを作成していきましょう。
以下では、ステップ1〜ステップ4の手順を深掘りし、海外マーケティングの始め方を詳しくレクチャーしていきます。
フレームワークの活用で効率的に戦略立案
また、海外向けのマーケティング戦略を立てる上では、ビジネス課題を効率的に解決するための枠組みである「フレームワーク」の活用が効果的です。
今回、海外マーケティングを始める上で紹介するフレームワークは、下記の6つです。
PEST分析
SWOT分析
STP分析
4P分析
4C分析
ASDAモデル
次の章からは、これら6つのフレームワークを用いた、海外マーケティングの始め方を4ステップで解説していきます。
ステップ1:調査と分析
海外マーケティングの始め方のステップ1、つまり最初にやるべきことが「調査と分析」です。
ターゲット国そのもの
ターゲット国の顧客
ターゲット国の市場
こういったものを下記のフレームワークを用いて調査、分析していきます。
PEST分析
SWOT分析
では、それぞれのフレームワークの活用方法をチェックしていきましょう。
PEST分析
分析観点 | 詳細 |
Political =政治的要因 | 政治の安定性や規制、貿易など |
Economic =経済的要因 | 経済動向、為替、購買力など |
Social =社会的要因 | 文化、消費者の行動傾向、人口など |
Technological =技術的要因 | インフラの整備、ネット環境など |
まずはPEST分析を通じて、ターゲット国について詳細に調査、分析を行います。
日本経済の弱体化が叫ばれていますが、とはいえ未だに世界の五本指に入るほどの経済大国なので、「日本の当たり前」は海外では通用しないことがほとんどです。
政治的安定性、経済動向、社会的背景、そしてインフラやインターネット環境などの技術的要因、あらゆる点で日本よりも劣った国がほとんどなので、こういった日本とのギャップをまずは知識の面で埋めていくことが大切です。
SWOT分析
分析観点 | 詳細 |
Strengths =強み | 自社の強みや優位性 |
Weaknesses =弱み | 自社の弱みや改善点 |
Opportunities =機会 | ターゲット市場での成長機会 |
Threats =脅威 | 競争の度合いや規制の状況 |
PEST分析で「相手(ターゲット国)」について知ったら、続いてSWOT分析で「自分(自社)」について知っていきます。
自社の強み、弱み、ターゲット国における立ち位置、そして今後の脅威となり得る要因などを事前にチェックすることで、どのように立ち回っていくべきなのかを決定する上での重要な情報が得られます。
とりわけ、この段階では「強み」について理解しておくことが大切です。
これからの時代の海外マーケティングを含めた海外ビジネスでは、絶対的な「競争力」が求められるので、自社がターゲット国やターゲット市場でどのような価値を顧客に提供できるのか、徹底的に考え抜きましょう。
ステップ2:セグメンテーションとターゲティング
ステップ1で相手(ターゲット国や市場)と自分(自社)について知ることができたら、続いてステップ2「セグメンテーションとターゲティング」へと進んでいきます。
このステップで効果的なフレームワークが「STP分析」です。
STP分析
分析観点 | 詳細 |
Segmentation =細分化 | 地理、人口、心理、行動などの観点で細分化 |
Targeting =ターゲットの決定 | 自社に最適なセグメントを決定 |
Positioning =自社の立ち位置の決定 | 自社に最適なセグメントを決定 |
STP分析では、まずはターゲット市場をさまざまな観点でセグメンテーション(細分化)し、セグメント(グループ)にわけていきます。
その後、得られたセグメントのなかから、自社の商材やブランドコンセプトに合致するセグメントを決定(ターゲティング)することで、ターゲット市場を効率的に攻略することが可能です。
たとえば、あるターゲット市場をセグメンテーションした結果、「高い購買力を持つ高齢者層」というセグメントが得られたとしましょう。
もし、自社が対象年齢が高めの高価格帯の商材を訴求したいなら、このセグメントが最適なセグメントであるとターゲティングできます。
そして、最後にこのセグメントに対する自社の立ち位置、いわゆる「ブランドコンセプト」のようなものを決定(ポジショニング)します。
このケースならば、「高品質、高価格」というブランドコンセプトが適切なポジショニングだといえるでしょう。
ステップ3:マーケティング戦略の策定
セグメンテーションとターゲティングが完了したら、続いて具体的なマーケティング戦略を策定していきます。
企業視点:4P分析
顧客視点:4C分析
ここでは、上記の2つのフレームワークを用いるのが効果的です。
4P分析
分析観点 | 詳細 |
Product =製品 | ターゲット市場に最適な商材の提供、開発 |
Price =価格 | ターゲット市場に最適な製品価格 |
Place =流通 | 効率的な流通経路の選択 |
Promotion =プロモーション | ターゲット市場に最適な広告戦略 |
4P分析は古くから用いられるフレームワークで、今もなお絶大な効果を発揮しています。
海外マーケティングにおいては、「商材のローカライズ」「越境ECやSNSの活用」が特に重要です。
一方、4P分析は「企業視点」の分析であり、現代マーケティングの基礎基本である「顧客目線」が抜け落ちる可能性があります。
この穴を、次に解説する「4C分析」で埋めていくことが大切です。
4C分析
分析観点 | 詳細 |
Customer Value =顧客価値 | 顧客のニーズへの応え方 |
Cost =コスト | 製品価格や維持費などのコスト |
Convenience =利便性 | 情報の得やすさや購入のしやすさ |
Communication =コミュニケーション | 顧客との信頼関係 |
4C分析は、顧客視点でのマーケティング戦略の立案が可能なフレームワークです。
ニーズ、コスト、利便性、そしてコミュニケーションという、顧客が求める4要素を漏れなく網羅できるのがポイントとしてあげられます。
このなかでも、海外マーケティングで重要なのは「ニーズ」「利便性」の2つです。
ステップ1と2で得られた情報をもとに、顧客のニーズを正確に掴み、現地の顧客が最も簡単に情報を得ることができ、購入が可能な場所(オンライン含む)を提供することが大切です。
最も一般的、かつ低コストな方法は、現地でメジャーな越境EC(Amazonなど)やSNSを活用すること。
この2つを活用することで、現地顧客に対して利便性、そしてコミュニケーションの機会を与えられます。
ステップ4:実行とフィードバック
企業視点の4P分析、顧客視点の4C分析を行い、マーケティング戦略を立案したら、あとは実行、そしてフィードバックを繰り返していくだけです。
プロモーション戦略に関するフレームワークである「AIDAモデル」について、詳しく見ていきましょう。
AIDAモデル
観点 | 詳細 |
Attention =注意 | 顧客の注意を引き出す広告やキャンペーン |
Interest =関心 | 自社や自社製品への関心を引き出す情報の提供 |
Desire =欲求 | 実際に自社製品を購入したくなる魅力の訴求 |
Action =行動 | 購買行動を促すプロモーション |
AIDAモデルとは、人が特定の製品やサービスを購入する動機に直接関与する、注意、関心、欲求、そして行動の4つにアプローチできるフレームワークです。
海外マーケティングにおいては、下記のような手順でAIDAモデルに従って戦略を立てることが可能です。
SNSやリスティング広告で顧客の注意を引き出す
広告からアクセスしたLPで自社製品への関心を引き出す
ニーズに合致した広告文やデザインで欲求を喚起
限定キャンペーンで購買行動へと促す
実際はこんなに簡単にはいかない可能性もありますが、流れとしては上記のようなイメージをしておきましょう。
そして、AIDAモデルに沿って実行したマーケティング戦略の効果を定期的に評価し、適宜改善を実行することでマーケティング精度を高めていくことが重要です。
海外マーケティングの成功事例
海外マーケティングを始める上では、「成功事例」について気になるはずです。
ここでは、注目に値する国内企業による海外マーケティングの成功事例を紹介します。
参考:国内企業の海外マーケティング事例4選|成功事例から海外マーケの最前線を解説
ヤクルト
ヤクルトは日本国内で知らない人はいない乳酸菌飲料を扱う企業ですが、実は東南アジアでも「知らない人はいない」ほどの知名度を誇ります。
現地の人にヤクルトが日本由来の製品だということを説明しても、「私たちのヤクルトまで日本に取られては困る」といって信じてくれないほど、現地の人に「現地の製品」であると思い込まれるほど浸透しているのは語り草です。
では、そんなヤクルトはどのようなマーケティング戦略で、これほどまでの地位を獲得したのでしょうか?
ここでは、インドネシアにおける事例を取り上げます。
まずヤクルトは、ターゲティングの段階で「主婦」に狙いを絞り、日本と同様に「ヤクルトレディ」と呼ばれる、女性営業スタッフを活用します。
主婦をターゲットにした理由はシンプルで、「家計と食卓を仕切っているから」というもの。
日本だけでなく、世界的に見ても家計、そして食卓を支えているのは「お母さん」なのです。
そして、その主婦と同性のヤクルトレディを活用し、寄り添う形で地道に営業を重ねます。
商材である飲料は「実際に飲んでもらう」ことが重要なので、オフラインマーケティングが高い効果を発揮するとの見込みは大当たりでした。
また、オンラインマーケティングは、「世界版LINE」ともいえる「WhatsApp」を選択。
LINEと同じで「生活に根ざしたメッセンジャー型SNS」なので、生活に密接に関係する飲料との相性は良好です。
この「明確で合理的なターゲティング」「地道な営業活動」を粘り強く実施し、今やヤクルトはインドネシアだけで1日700万本を売り上げています。
出典:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/986a554a54e5bede.html
キッコーマン
醤油系の調味料や大豆加工製品で日本トップクラスの規模を誇るキッコーマンは、世界的な調味料メーカーとして知られています。
世界に乗り出す最初の一歩は、1956年のアメリカの新聞でした。
「All-Purpose Seasoning(万能調味料)」という明快なキャッチコピーを新聞で打ち出し、このマーケティング手法が大当たり。
これ以来、キッコーマンしょうゆのラベルには、このコピーを表記しています。
現代は、インターネットを使えばこの事例と同様のことが低コストで実施できるため、自社を簡潔に説明できるコピーを活用する価値は大いにあるでしょう。
その後、キッコーマンはヨーロッパ、アジア、そして南米と進出しますが、「段階的に」進めていったのが鍵です。
「和食に使う」という日本流の使い方をそのまま現地に移植するのではなく、ターゲット国やエリアに合ったやり方、すなわち「現地料理とどう合わせるか」といった観点を持ち、マーケティング戦略に組み込んだのが勝因です。
一方、この手法にはターゲット国の調査に時間がかかるため、「段階的な」進出になってしまいます。
しかし、一気にワールドワイドに広げていこうとしてもその難易度は非常に高いため、段階を踏んで、都度リソースを集中させていくことが大切です。
出典:https://www.kikkoman.co.jp/enjoys/soysaucemuseum/global.html
海外マーケティングを成功させるポイント
綿密に戦略を立案する
適切なマーケティング手法を選択する
ターゲット国のことを本質的に理解する
自社リソースのみで対応できない場合は支援を活用する
現地法人に丸投げしない
私たち「The Digital X」はグローバルマーケティングに関する支援を実施していますが、これまで経験してきた中で、海外マーケティングを成功させるポイントは以上の点だと考えています。
海外マーケティングは日本に向けたマーケティングとは大きく異なるため、綿密な戦略立案や適切なマーケティング手法の選択が求められます。
そして、これらを行うには大きなリソースが求められますが、自社リソースのみで対応できると考え、途中で空中分解する例は後をたちません。
一方、リソース不足を解消するために現地法人に丸投げをするケースもありますが、日本本社の求めるものと乖離し、うまくいかないケースも同様に多く存在します。
このことからわかる、海外マーケティングを成功させるポイントは、適切な支援を活用し、自社が主体となって戦略を立案し、そして実行していくことです。
私たち「The Digital X」は、グローバルマーケティングのプロフェッショナルとして、海外マーケティングの手厚い支援を実施しています。
海外へのマーケティングでお悩みを抱えているお客さまは、「弊社カタログ」をご覧いただくか、「お問い合わせ」にてお気軽にご相談いただけますと幸いです。
まとめ
海外マーケティングは難易度が高いものの、記事で紹介したフレームワークを活用していくことで、効率的かつ効果的に戦略を立てることが可能です。
まずはステップ1から始めていき、商圏を海外へと拡大することで、ビジネスチャンスの拡大を狙っていきましょう。
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