2024年5月25日
インバウンド対策を成功に導く4つのポイント|効果的な施策が今必要な理由
「インバウンド対策」とは、訪日外国人を対象にしたマーケティング手法です。新型コロナウイルスの影響を受け、2020年~2022年にかけて海外旅行をする国内外の旅行客は激減しました。
2022年の後半から規制が緩和されるようになったことや円安の影響などを受け、ここ数年は海外から日本へと訪れる「訪日外国人」が急増しています。しかし、海外からの来客が増えても、対策が不十分だと長期的な売上向上は見込めません。
そこでこの記事では、インバウンド対策におけるメリット・デメリットなどの基礎知識について、詳しく解説していきます。
インバウンド対策を効果的におこなうために知っておくべきことや、今準備すべきことについても紹介しますので、訪日外国人への販路開拓を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
【インバウンド対策とは?】事例とメリットデメリット
「inbound(インバウンド)」は直訳すると「内向き」、つまり外から中に入って来ることを意味する言葉です。ビジネスにおけるインバウンドとは、主に国内へ訪問する外国人観光客のことを指します。
インバウンド対策は、訪日外国人に日本のサービス利用を促すためのマーケティング施策です。日本語や日本文化に不慣れな外国人に対し、日本の店舗やサービスを利用しやすくすることで機会損失を防ぎ、満足度を向上させるのが主な内容になります。
外国人観光客が快適に過ごせる環境を提供し、日本のサービスを積極的に利用してもらうことで、ビジネスチャンスを広げることが目的です。インバウンド対策の具体例としては、以下のような内容が挙げられます。
【インバウンド対策の具体例】
お店の看板やメニューの多言語化
訪日外国人向けの案内所設置
外国語に長けたスタッフの設置
自社Webサイト・サービスの多言語化
日本文化の体験サービス
辺境ECを活用したプロモーション など
日本に来る外国人は観光客だけでなく、ビジネス・留学・出稼ぎなどさまざまな理由で訪日するケースが考えられます。今後は、日常生活における消費行動も含めた、広い意味でのインバウンド対策が求められるようになるでしょう。
インバウンド対策のメリットとデメリット
インバウンド需要に適切な対策をおこなうことで、以下のようなメリットが生じます。もちろんメリットだけでなく、デメリットが生じることにも留意しなければなりません。
メリット | デメリット |
国内への経済効果 日本の歴史や伝統文化への理解・認知度向上 地域活性化 顧客層の拡大・獲得 新たな雇用やサービスが生まれる | 社会事情の影響を受けやすい コストがかかる 過剰な依存度が生じる 資源の過剰消費 地域格差の拡大 文化の違いによるマナー違反や風紀の乱れ |
インバウンド対策のメリットとして、まず経済効果が挙げられます。訪日外国人による消費支出が増加すれば、観光業をはじめとするさまざまな業界で経済的な恩恵が期待できるでしょう。
次に、地域活性化です。訪日外国人が訪れた地域の魅力をSNSなどで広めることにより、日本の歴史や伝統文化の認知向上につながります。また、観光客の増加に伴い、新たな雇用やサービスが生まれるため、地域全体の活性化も期待できるでしょう。
ただし、インバウンド対策にはデメリットや課題も存在します。インバウンド需要は社会事情に影響を受けやすく、感染症の蔓延や政治不安、外交関係の変動に左右されやすいです。
また、外国人観光客を受け入れるためには、決済方法やWi-Fi環境の整備、多言語対応などが必要で、これらの整備には時間とコストがかかります。
さらに、都市部に観光客が集中するため、ほかの地域で観光客が減少する可能性もあるでしょう。資源の過剰消費や、マナー違反による地域住民の生活環境への影響も懸念されています。
インバウンド市場の動向と需要
2023年の訪日外国人消費額は、コロナ前の2019年に比べても9.9%増であり、過去最高の5兆2,923億円となりました。ここからは、日本が旅行先として世界から注目されるようになった理由や、具体的なアウトバウンド需要のある国について詳しくみていきましょう。
(引用:観光庁「訪日外国人消費動向調査 2023年暦年全国調査結果(速報)の概要」
日本の観光地としての需要
日本が世界から注目されている理由の1つに、観光地としての魅力が高いことが挙げられます。2021年の「世界経済フォーラム」による調査では、日本が「旅行・観光地開発ランキング」の総合1位となりました。
さらに、2023年10月の米国旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」では、「世界で最も魅力的な国」として日本が1位に選出されています。日本が旅行先として選ばれる主な理由は以下の3つです。
交通インフラの利便性
豊かな観光資源
治安の良さ
今後もさまざまな分野で訪日外国人向けの市場が回復・拡大していくことを考えると、インバウンド市場を意識した適切な対策が必要になります。インバウンド対策をおこなうことで、自社のビジネスチャンスを拡大できるのです。
参考:観光経済新聞「魅力的な旅先で1位 大都市では東京が2位」/世界経済フォーラム「2021年旅行・観光開発指数発表:旅行・観光産業における回復の兆しと、将来の逆風に備える必要性」
インバウンド需要がある国や地域
2022年の「日本政府観光局(JNTO)」の調査では、以下の国や地域からの訪日外国人が多いことがわかっています。
【インバウンド需要がある国や地域】
韓国
シンガポール
ベトナム
フィリピン
台湾
タイ
中国
アメリカ
イギリス
カナダ
オーストラリア
2018年から2020年にかけては、韓国・中国・台湾・香港・タイ・アメリカからの訪日者数がメインでした。2021年から2023年にかけては、ベトナム・シンガポール・フィリピンからのインバウンドも増加しています。
さらに、アジア圏以外ではイギリスやカナダ、オーストラリアからの訪日者も増えており、今後はよりさまざまな国からのインバウンドが増加するでしょう。
インバウンド対策を成功させる4つのコツ
ここからは、インバウンド対策を実施する際に必要なポイントについて詳しく解説していきます。企業がインバウンド対策を適切におこなうためのコツは以下の4つです。
ターゲット層の明確化
訪日外国人目線のマーケティングリサーチ
ブランディングの徹底
訪日外国人への理解深耕による顧客体験の向上
1.ターゲット層の明確化
インバウンド対策を成功させるためには、ターゲット層の具体化が不可欠です。広すぎるターゲット設定は、結局どの層にも響かないという結果になる可能性があります。万人に受け入れられる戦略は誰にも共感されないことが多いため、明確な「ペルソナ」を設定することが重要です。
たとえば、どの国の旅行者にアピールするのか、年齢層や性別・来日目的・予算などを考慮してターゲット層を絞り込みます。具体的な手法としては、SNSを活用した広告や情報発信が挙げられるでしょう。これにより、ターゲット層に直接リーチすることができます。
ターゲット層に合わせたサービスや商品の提供で顧客満足度が高まることにより、リピーターの獲得が期待できるでしょう。さらに、ターゲットを明確にすることは、予算や労力の無駄を減らし、限られたリソースを効果的に活用することにもつながります。
2.訪日外国人目線のマーケティングリサーチ
インバウンド対策を成功させるためには、訪日外国人目線のマーケティングリサーチが重要です。
訪日外国人は言語や文化、生活習慣の違いから、国内観光客とは異なるニーズを持っています。そのため、外国人目線での価値観を理解し、彼らが何を喜び、何を求めているのかを把握することが求められるのです。
たとえば、日本人には当たり前のサービスや商品が、外国人には新鮮で魅力的に映ることがあります。逆に、日本人に人気のあるものが外国人には響かないこともあるでしょう。
訪日外国人にとっての魅力を見極め、彼らのニーズに合わせたサービス提供やマーケティング戦略を構築することで、満足度を高めることができます。満足度の向上はリピート率の向上にもつながり、持続可能なインバウンド対策の基盤となるのです。
3.ブランディングの徹底
インバウンド対策を成功させるためには、ブランディングの徹底も重要です。ブランディングとは、企業や商品、サービスのイメージを形成し、ターゲットに認知してもらうことを意味します。インバウンド対策では「海外の人を歓迎している」という姿勢を示すことが不可欠です。
具体的には、まず多言語対応が求められます。日本語だけのWebサイトでは、訪日外国人に十分な魅力を伝えられないため、英語やほかの主要言語に対応することが大切です。また、SNSを活用して視覚的にアピールすることや、多言語対応のアプリを提供することも効果的でしょう。
さらに、キャッシュレス決済の充実も重要な要素です。多くの訪日外国人がキャッシュレス文化に慣れているため、日本でも電子マネーやスマートフォン決済の導入を進めることが求められます。訪日外国人の利便性を高めることは、店舗や企業の機会損失を防ぐことにつながるのです。
4.訪日外国人への理解深耕による顧客体験の向上
訪日外国人への理解を深めることも、インバウンド対策には必要な要素です。異なる文化や価値観、習慣を持つ外国人観光客に対する理解が不十分だと、トラブルの原因になることがあります。
他国の文化を理解することは、異文化トラブルの防止や顧客満足度の向上に役立つでしょう。
前述した言語の壁を越えるための多言語対応や、キャッシュレス決済の充実は、顧客体験を大いに向上させます。さらに、無料Wi-Fiの設置など快適な観光環境を整えることも重要です。これにより、訪日外国人にとって便利なサービスが増え、競合他社との差別化が図れます。
近年の世界的なインフレと急激な円安により、日本での消費が割安に感じられやすくなっているからこそ、おもてなしに溢れたサービスの提供が顧客満足度の向上に貢献するのです。
まとめ
これからのインバウンド対策に必要なのは量ではなく質です。「今ここでしかできないかけがえのない経験」を提供することが重要になっていきます。
そのためには、自社商品やサービスへの理解はもちろん、訪日外国人への理解を深めることが大切です。彼らのニーズを適切に把握して応えることで、よりよい顧客体験を提供できれば、インバウンド対策の成功を導くことができるでしょう。
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